01 TDC年鑑 一般部門審査員特別賞:小磯裕司
2001 TDC賞

 

 

新日本語表音文字体系「拍仮名」

日本人には、地球規模の普遍性へと飛んでいってしまう前に考えなければならない問題が足元に転がっている。その問題点の所在を明らかにし、答えを探るための一つの方向性を示すことが、今回私が提案した実験作品の存在意義である。おそらく多くの人が感じている「日本」というものの居心地の悪さの正体は、「日本文字」の中に造形化されている。(例えば、「日の丸」と「日本文字」は、「居心地の悪さ」において相似形である。)その「居心地の悪さ」の可視化・顕在化は、タイポグラフィーというフィールドにおいてこそ可能な実験である。
文字は、言語の肉体である。言語に立脚しない文字は、単なる図形である。だから、タイポグラフィーは、言語の抱える問題に自覚的であるべきだ。言語に無自覚なタイポグラフィーは、表象のお遊戯に過ぎない。私達が、「時代感覚」とか「センス」とかいった実体の無いものにかまけて、表面的な「あしらい」の些細な巧拙のみを競い続けるならば、豊饒なる文字文化の醸成に寄与しないばかりか、却ってその退廃を助長することになりかねない。

小磯裕司 Yuji Koiso

1966年 東京都生まれ。1990年 多摩美術大学美術学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。現在、株式会社日本デザインセンター勤務。