04 TDC年鑑 グランプリ:M/M (Paris)
2004 TDC賞

展覧会
"ICONES, INDICES, SYMBOLES"

2003年6月に開催されたショーモント・ポスター・フェスティバルへの出品の誘いを受けた。作品を展示する候補会場を見て廻るうちに私たちはこの「イエズス会チャペル」に出会い、その素晴らしさに圧倒された。古い修道院のチャペルで、現在は神聖性が解かれて展覧会場として使われている。このような場所でグラフィックデザインを展示するなど、一見不思議に思えるかもしれないが、私たちは絶えず「装飾」というものを「客観」に照らし合わせて再評価しようとしていることから、バロック様式の建物はとても自然なコンテキストのように感じられた。私たちのイメージがこのようなスペースにどう対峙するのか、作り上げた記号が、献身的な信仰のために捧げられたこの場所にどのように身を置くことになるのか、それを見たかったのである。
まずローリアン劇場のためにデザインした一連のポスターをこの場所に展示することにした。これらのイメージは複雑精緻であり、シンボリックな意味や隠された含意を持っており、特筆すべきキャラクターも数多く登場するからだ。その意味で、この種の建物を飾ってきた西洋宗教絵画とあまりかけ離れた性質のものではないように思われた。
ポスターは、ただ壁に掛ければいいというものではない(いずれにせよ空いている壁はなかったが)。そのため、いくつか特製の家具をデザインした。実際、家具のデザインはタイプフェイスのデザインとさほどに変わらないものと考えている。
私たちの作るタイプフェイスのデザインは、バウハウスのタイプフェイスの構造に由来する。彼らは当時、規則やグリッドを数多く活用することで、あらゆる主観的な「細工の跡」を排除し、国際的な言語を作り上げることを狙った。メディアスペースでの注目度は主観的であればあるほど高まることを承知した上で、このタイプフェイスの歴史をさらに進めていき、その結果、装飾を付加することにより機能からフォルムが産まれるという厳格な規則を一時的に破り、論理だけではなく、直感の問題として考えなければならない主観性を参考にしたのである。フレームは、教会の装飾的なパターンを反映させ、ポスターの複雑さを讃える意味で同じようにデザインしただけである。
教会では音楽に出会いたいものだ。このような空間では、音楽が −単に音響学的に響きが違うということではなく− 他の場所とは違った響きになる。私たちは、大好きなアイスランドのポップ歌手、ビョークと以前仕事をする機会があったことから、展覧会場で彼女の歌声を聴くことができればポスターも引き立つと考えた。そこで教会の真ん中に「プロジェクション・ルーム」を設け、その中に私たちがディレクションを行ったビョークのビデオ(彼女の顔だけをフィーチャーしたもの)を流すことにした。教会の中には「私たちは隠れた場所(神聖な場所)に」の歌詞が響き渡った。
プロジェクション・ルームは16脚のポスター・スタンドに囲まれた、巨大な白い立方体のままにしておくわけにはいかなかったので、私たちがデザインしたカモフラージュのような壁紙ポスターをチャペルのデザインに合わせて色を変え貼っていった。これはこの壁紙シリーズの6番目で、当初は私たちが手がけたさまざまな断片を複合して私たちの「記号の世界」としてデザインしたもので、何年か前にスウェーデンで開催したポスター展の最初の頃に背景として使用したものである。私たちは何もない壁にポスターを飾るよりは、このように、あるコンテキストの中に飾るのが好きだ。以来、これを使用する際には、個々の状況に合った色に変えることにしている。
教会の祭壇部分は本のデザインを展示するのに最適だった。以前に、人の手が本のページを一枚ずつめくっていくというビデオを制作したことがある。床面には、暗号めいた、判読不可能なフォントをあしらった、以前にパリのカフェのためにデザインしたカーペットを敷き、その上にテレビ・モニターを設置、このページをめくっていく長いシーケンスを映し出した。
次は展覧会のタイトルを決めなければならなかった。マティスが最近読んだ本の中に、アメリカの数学者、哲学者、論理家、そして記号論のパイオニアでもあるチャールズ・サンダース・ピアスの本がある。ピアスはその中で記号を「アイコン、索引、シンボル (ICONES, INDICES, SYMBOLES)」に分類している。これは私たちが成し遂げようとしていたことにも適っており、彼の言葉を引用し、アルファベットで表現したポスターを使用して、この三つの言葉をプロジェクション・ルームの壁紙ポスターの上をぐるっと一周回るように配することにした。このポスターで使われる文字は、私たちの友人である写真家、イネズ・ファン・ラムスヴィールデとフィノード・マタディンの写真をもとにしている。文字は「A」がアンヌ・カテリーヌ、「B」がブリジェット、「C」がカルメンという具合に、モデルの名前で決定した。こうして26人の美しい女性が26文字のアルファベットに変身したのである。
人が生活しない、一切の人の営みが排除された空間は、深みに欠ける。そのため、私たちの作ったブラックメタルのライトボックスを教会の中に置くことにした。これは「ザ・エージェント(代理人)」と呼ばれ、人間とその複雑さを代表する、生命を持ったキャラクターだ。「ザ・エージェント」には、人間の顔のシンプルさと魅惑のパワーが秘められている。これは私たちのインテリジェント・ロゴタイプで、これまでに制作してきた数々のイメージの中に自由に登場するという複雑な経歴の持ち主だ。swarnで組織されたこれらは要所要所に登場し、数々の経歴を築いてきた。現在では心理的に多くの含意を持っている。

M/M(Paris)

M/M (Paris)の二人、マイケル・アムザラグとマティス・オーギュスティニアックは、ファッション、アート、音楽の仕事を通じて、ヨーロッパで最も影響力のあるグラフィックデザイナー、アートディレクターである。パリのアートスクールで出会った後、1992年にM/Mを設立。パリを拠点に、ヨージ・ヤマモト、バルセロナのNicolas Ghesquiereらファッションデザイナーや、写真家のCraig McDeanやInez van Lamsweerde & Vinoodh Matadin、アーティストのPierre HuygheとPhilippe Parrenoとの長年に亘るコラボレーションを展開しており、また、2000年のビデオ作品"Hidden Place"に始まったビョークとの仕事には、他にアルバムデザインや本の企画がある。2002年より、Vogue Parisのクリエイティブコンサルタント兼アートディレクター。