2007年 小林章欧文タイプ・セミナー「実践アルファベット!」質疑応答(2)


Q. CIやロゴ・フォントを作る時に、どういう手順で作っていくのが良いでしょうか。CIの場合、企業の理念や特徴を把握して、それを文字とシンボルで構成していくわけですが、その理念や特徴を文字に落とし込んでいくのに、どういったやり方でやっていくのでしょうか。何か良いやり方があれば教えていただきたいです。また、その上で文字に対してルールを与えていくと思うのですが、どういった手順でルールを与えていきますか。またどういう時にそのルールを壊したり、インパクトを出していきますか。具体的な文字の作り方も教えていただきたいです。アドバイスよろしくお願い致します。(29歳、Macデザインアカデミー)

A. セミナーの最初にも申し上げたとおり、「CIやロゴ」と書体設計は別のものなので、書体のことについてお答えします。例えば角が丸いのが特徴の書体をつくろうとしたら、そのルールを当てはめるためには、先の丸いフェルトペンみたいなものを持って書いたらこうなる、というふうに想像するとかですね。自然にそうやって当てはめるクセが着いていると思うので、決まった手順とかはないです。インパクトの出し方は、書体の場合ですが、アルファベット全部の文字に極端な特徴を与えると、かえってそれが反復されて単調になるので、数文字だけに押さえる程度が良いと思っています。もちろんその文字が入っていない単語を組んだらそれは見えないままおわっちゃうわけですが...ロゴだったら「必ずこの文字は一番最初に来る」ことが前提でつくりはじめることができますね。
 ルールの壊しかたについては、有名なタイポグラファであるヤン・チョヒョルトがあるデザイナーと意見を戦わせている書簡で「名人だけがルールを壊すことができる」と書いているのを読んだことがあります。壊すためには、まずルールを身に付けることでしょう...というと、つまんないありきたりの答えみたいですが、本当だと思います。


Q. 小林さんのすてきな(美しいと思う)ロゴデザイン、タイプデザインなど具体的に教えて頂きたいです。(20歳、女子美短大)

A. ちょっと前、佐藤卓さんのインタビュー記事を読んだとき、佐藤さんがこのような意味のことをおっしゃっていました(その記事を探しましたが見あたりません。文章が正確ではないかもしれませんがお許しください)。
――この商品のロゴはドイツ語で、多くの日本人にはなじみのない単語かもしれない。しかし発売にあたって TVCM を多く放映するので、すでに音声として商品名が認識されているはずだからロゴそのものが一目で読めるかどうかは大きな問題でない――
これ、勉強になりました。コンケラーのレターヘッドコンペ審査で同席したとき、佐藤さんにこの話をして、「文字の形だけが物差しじゃないんですね」と申し上げました。こういう話を聞いちゃうと、ロゴについて何か一つの見方からコメントするのは難しいですね。タイプデザインは、好きなのがいっぱい(数千)あります。


Q. K Kに関連して、メルセデスベンツの過吸器付きのものKOMPRESSOR
というエンブレム付きのものがあるのですが、ロゴタイプ以外でも受け入れられる(特に読みにくくはない)のでしょうか?またイタリックの書名が疑問文中の最後にある場合は「〜〜(著名〜?)?」←このようになるのでしょうか?(35歳、タイプデザイナー)

A. すみません、前半のご質問の意味が分からないので、また別に問い合わせしてください。イタリックの書名が疑問文中の最後にある場合は、イタリックの文字を" / " で表現すると///// // ////? となって疑問符だけローマンです。


Q. イタリック体の傾斜角ですが、タテ棒ひとつ比較しても同書体の中でも個々のアルファベットで結構まちまちな気がしますが、これも視覚効果によるものでしょうか。また逆に全てが同じ傾斜角である事は不自然でしょうか。(25歳、無職)

A. 書体によると思います。Helvetica や Univers などのサンセリフ体はほとんど同一の傾斜角になっていると思います。セリフ書体のイタリック体の場合はまちまちで、ちゃんと御理由があります。小文字の f が他より立ち気味だったりするわけですが、ご想像の通り、それによって同じ角度に見せるわけです。そのへんが分かると書体デザインは面白くなります。


Q. ロゴの統一感の話が何度か出ましたが、一つのロゴの中に例えば筆記体とサンセルフ体のような性質の異なる書体を使うというのはやってもいいのでしょうか。もし良い場合、それらに統一感を与えるためにどのような点に注意すべきでしょうか。(21歳、東京工芸大学)

A. 性質の異なる書体を組み合わせる場合、統一感よりもコントラストを際立たせることをやったほうがいいように思います。


Q. スペーシングの空きの見極めるのはどのようにして訓練していったのか知りたいです。(29歳、グラフィックデザイナー)
Q. スペーシングが正しく身に付く方法を伺いたいです。(34歳、グラフィックデザイナー)

A. 人にスペーシングのマズイ部分を指摘されて、それを直そうと悩むわけです。悩んだあげく気づいたのが、黒い部分を見るのでなく白い部分を見るということです。


Q. 裏返して字間のバランスを見たりすることは逆に文字が見えている状態では不自然に見えると思うんですが、逆の状態で見てどう判断するんですか?(22歳、会社員)

A. 白と黒のバランスです。もっと簡単に言うと白の部分の形です。単純に形の美しさや空間の量を目で測るのが問題なので、そのとき一点一画の形がどうとか、読めるかどうかとかは関係ありません。


Q. 書体を設計するときに最初にガイドラインを引きますか?例えば四角の中に十字を書いてのような枠を作って、その中にあてはめていくような。もしそうするなら、その基準はどうやって決めてますか?(お気に入りのガイドラインはありますか?又は自分の中のルーや禁じ手はありますか?(35歳、ブックデザイナー)

A. 方眼紙を使って書き始めるということも時にするので、そういう意味での水平方向のガイドラインはありますが、一文字だけで終わることはありません。だから四角とか十字とか一文字で終わってしまうようなものは使いません。必ず数文字を横に並べて、意味のない文字の羅列でも単語に見えるようにスケッチします。自分の中のルールがあるとすれば、単語として美しく見えること、が最低限の条件です。


Q. ガラモンドなど代表的な書体にパーレンがベースラインより下がっているものがあると思うのですがなぜですか?(例えば、大文字にくらべて( )が下がって見えるのですが、なぜそのようになっているのか、歴史的な背景などでの理由などあれば教えて頂ければと思います。)(23歳、デザイナー)

A. パーレンがいつ頃できたかはわかりませんが、手元にある1541年の印刷物にもパーレンがあります。下はベースラインよりだいぶ下がっていますが、要するに小文字の b,d,h などもg,p,y なども全部くくれるように、ということでしょうね。最近のフォントでは、大文字と揃うパーレンとかスモールキャップに揃うパーレンとかをオルタネート文字として含んだものもあります。


Q. 現在、「デザインの現場」に連載されている記事が単行本になることを心待ちにしています。(24歳、会社員)
Q. 「欧文書体2」または新しい本を作られる予定はありますか?デザイナーが書体を作る時代がきましたが、どう思いますか?(20歳、京都造形芸術大学芸術表現・アートプロデュース学科)
Q. 最後の方にお話されてましたが、最近の新しい書体の紹介を期待しています。小林さんの評で聞いてみたいです。(?歳、武蔵野美術大学)

A.
『欧文書体』続編を現在執筆中です!現在の『デザインの現場』の連載「フォント演出入門」と「定番書体徹底解剖(2005年8月号から2006年12月号まで連載)」をベースにしますが、書籍化のさいに新しい部分を付け加えて出すことが決まっています。たぶんほとんどのみなさんが使っている、あの有名な書体の制作の舞台裏を現在オリジナルのデザイナーに取材中です!ほかに「この書体がどうやってできたのか知りたい」という書体があれば、ぜひ、ぜひおきかせください!TDC と美術出版社とのご協力で、ご意見用メールアドレスをつくってもらいました。
※こちらつきましては質問のメール受付は終了いたしました。ご質問いただきましたみなさま、ありがとうございました。


Q. 外国とかの新しい書体を見つけるにはどうすればいいのですか。雑誌とかで見つけるのですか。(20歳、女子美術大学)

A. 新しい書体の情報が全部入ってくるわけでないので、書体メーカーや販売ウェブサイトのこまめなチェックくらいですかね。


Q. 毎年新しい書体が生まれて、今すごい数の書体がありますが、逆に多すぎて制作物に書体を選ぶ時に困ってしまいます。なので、小林さんが紹介していこうかと思っていま、と言ってくださっていたので、それはうれしい!と思いました。そこで、質問ですが、多くの書体がどうしてあんなにも毎年のように生まれるのか、新しい書体をつくる際に、行き詰まってしまうことはないのでしょうか?これ、○○○とあんまり変わらないな、とか。(20歳、女子美術大学)
Q. 新しい良い文字の紹介を期待しています。言葉同様に文字も普段から使われていくものですし、変化して当たり前なので気になります。(21歳、女子美術大学)

A. 現在『デザインの現場』に連載されている記事もそうですが、適材適所のフォントの紹介、それから品質の良い新書体(ライノタイプに限らず)もこれからどんどんしていきます。お楽しみに。既成の書体に似すぎて行き詰まることは、幸いほとんどないです。ドイツのある美術専門学校で講演したあとで、学生に「こんなにたくさん書体があって、もう新しい書体は要らないのでは?」と聞かれたとき、私はこう聞き返しました。「音楽の世界ではバッハがあった、ベートーベンがあった、ブラームスがあった、ビートルズがあった。じゃあもう新しい音楽は要らないね?」。その学生は「そんなことはない、必要です」と笑って答えたので、「私の答えもそれと同じです」と言いました。


Q. 欧文フォントは色々な言語で組むと思うのですが、国ごとに組み版ルールがあれば、教えていただきたいのですが、是非どこかで紹介して下さい。(27歳、パッケージデザイン)

A. 『デザインの現場』の連載、2007年6月号、8月号、10月号でドイツ、イギリス、フランスの組版ルールのほんの一部を紹介しました。ルール全部を網羅するというのは限られた誌面では無理ですが、国ごとにけっこう違いがあるんだと分かって頂くためのきっかけくらいにはなったと思います。


Q. 新しい書体をつくるときというのはどのようなきっかけからはじまるのですか?例えばというもので聞かせてください。(21歳、デザイナー)

A. 例えば、古い雑誌広告でみょうに味のある手書き文字を見つけたとして、そういう雰囲気を書体化できないかと思ったり、古い活字書体のこの部分は良いんだけど、別の部分を改良したらもっと面白くなるんじゃないかと思ったり。なにか創作意欲を刺激されて、そこから始まるのが私の場合は多いです。大事なのは、昔のものの物真似とか焼き直しに終わるのでなく、お手本を超えていなくてはいけないこと、結果として生まれる書体を現代で使う意味がなくてはならない、ということです。


Q. 話を聞いていて「ルール」はないとおっしゃっている事が多かったと思いました。文字を組む時の絶対的な決まるという事はありますか。(21歳、大学生)

A. 文字を組むというのは人に何かを伝達するという目的があってすることですから、想定した読者にちゃんと伝わるか、その場にふさわしいか、ということが大事だと思います。そしてそれは「ルール」ではなくて、思いやりとかちょっとかしこまったものの場合は「行儀」とか「作法」みたいな事、あるいは「場の雰囲気に合わせる」ことみたいなものです。全身真っ赤な服を着ていったからといってパーティだったら浮かないかもしれない、でも、その服装がいつも通用するとは限らない。それがお葬式だったら...みたいな考え方をしてみてください。


Q. ロゴ等を作図する時、どうしても境界線に違和感が残ってしまいます。修正する際の上手な考え方のようなものはあるのでしょうか?(28歳、グラッフィクデザイナー)

A. 「境界線」というのはどういう部分なのかわかりませんが、曲線がうまくつながらないとかアウトラインがきれいに見えないということでしょうかね。かりにアウトラインを立体化したら、それを手でなでてみてデコボコが無くなるくらいまで磨き上げるというような感じで私はやっています。


Q. 書体をデザインするとき、実際使われた場合の色は考慮しますか?やはり黒が基本なんでしょうか?(21歳、学生)

A. 最初からそういう指定がある特注フォントでない限り、色は考えません、というか、想定できない部分です。あと、読者がどういう光線のもとに、どういう角度で、静かに座っているのか乗り物で移動中なのか、も書体デザイナーは想定できません、それを使うデザイナーはある程度それはできる仕事もあると思いますが。


Q. 文字の倍率をあげてディテールを作り込むと全体のバランスが気づかないうちに歪んでたり、逆に文字の倍率を引きすぎるとパスのコントロールが難しいと思います。どれくらいの倍率で通常作るものでしょうか。(27歳、株式会社デンソー)

A. スクリーンの文字はあくまでも参考だというくらいに考えた方がいいです。ビットマップフォントみたいにスクリーン上の可読性が問題になる場合は別にして、スクリーンだけでつくることはお勧めしません。必ずいろんな大きさでプリントアウトして確認します。紙がもったいないと思われるかもしれませんが、確認作業を怠って変な書体を世に出しちゃって、それで何万枚も印刷されてしまってから気づくよりははるかに良いです。


Q. 書道は得意なのか、聞いてみたい。(29歳、株式会社博報堂プロダクツデザイナー)

A. 「習字」のレベルですが、小学校五年生くらいまで得意でした。コンクールで賞状とかももらいました。叔父が能書をしていたり、戦死した別の叔父の十四歳のころの立派な楷書の漢詩が床の間にかけてあったり、新潟鉄工の車両工場の塗装工である父が暇なときに千字文の教本を眺めてそれを手本に書いていたりしたのも覚えています。学問としてやっていたのでなく、鉄道車輌にペンキで書くときも字がきれいに書けるように練習していたんだと思います。教本の文字はきれいで、よく眺めていました。みんな筆を持って何か書くのが好きだったようで、そんな中で育ったので、小学生ながら字の形の良し悪しは分かっていたと思います。ただ、今だから白状しますが、たしか五年生のときに、「雪あかり」という字を書き初めコンクールに出すために何枚か書きました。いちばん上手く書けたものでも、自分の書いた「雪」という字の雨かんむりの形が頭で描いた理想まで到達できていないのに気づいて、ズルをしました。あとからちょっと書き加えて修整したんです。ただ、悪いことはできないもので、それがたまたま賞状をもらって、得意になって叔父の家にその習字の作品を持っていったら、修整した部分を見抜かれて、その場で叱られました。それ以来習字は恐くなってちょっと間をおいて接するようになりました。社会人になって寄席文字を知り、それは手直しもありでこしらえながら書く文字なので、「これなら怒られない!」と思って安心して習い始めました。もちろんそればかりではなく、寄席文字の強烈な魅力にひかれたわけなんですが。


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